行政法研究者有志声明

 2015年10月23日に、行政法研究者有志一同による「辺野古埋立承認問題における 辺野古埋立承認問題における 政府の 行政不服審査制度の濫用を憂う」声明をリリースしました。

ご存じのように、沖縄県知事は、前知事の行った辺野古沖公有水面埋立承認を取り消す処分を行いました。
これに対し、沖縄防衛局は、地方自治法上の関与制度ではなく、「国民の権利利益の救済」手段である審査請求と執行停止を国土交通大臣に申し立てております。沖縄県から21日に弁明書・意見書が提出されたので、同大臣は来週にも執行停止の決定を下すことが確実視されています。
 このように国が国民の権利救済のための制度を濫用していることに対して、日本公法学会に属する行政法研究者の会員7人(岡田正則早稲田大学教授、紙野健二名古屋大学教授、木佐茂男九州大学教授ら)が呼びかけ人となって、専門の行政法研究者として、以下の声明を公表し、世間にアピールすることといたしました。

呼びかけ人と賛同者は、23日公表時点で
併せて93人(氏名非公表は15人)、25日現在で95人(氏名非公表は16人)です。
声明

 周知のように、翁長雄志沖縄県知事は去る10月13日に、仲井眞弘多前知事が行った辺野古沿岸部への米軍新基地建設のための公有水面埋立承認を取り消した。これに対し、沖縄防衛局は、10月14日に、一般私人と同様の立場において行政不服審査法に基づき国土交通大臣に対し審査請求をするとともに、執行停止措置の申立てをした。この申立てについて、国土交通大臣が近日中に埋立承認取消処分の執行停止を命じることが確実視されている。

 しかし、この審査請求は、沖縄防衛局が基地の建設という目的のために申請した埋立承認を取り消したことについて行われたものである。行政処分につき固有の資格において相手方となった場合には、行政主体・行政機関が当該行政処分の審査請求をすることを現行の行政不服審査法は予定しておらず(参照、行審1条1項)、かつ、来年に施行される新法は当該処分を明示的に適用除外としている(新行審7条2項)。したがって、この審査請求は不適法であり、執行停止の申立てもまた不適法なものである。

 また、沖縄防衛局は、すでに説明したように「一般私人と同様の立場」で審査請求人・執行停止申立人になり、他方では、国土交通大臣が審査庁として執行停止も行おうとしている。これは、一方で国の行政機関である沖縄防衛局が「私人」になりすまし、他方で同じく国の行政機関である国土交通大臣が、この「私人」としての沖縄防衛局の審査請求を受け、恣意的に執行停止・裁決を行おうというものである。

 このような政府がとっている手法は、国民の権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するものであって、じつに不公正であり、法治国家に悖るものといわざるを得ない。

法治国家の理念を実現するために日々教育・研究に従事している私たち行政法研究者にとって、このような事態は極めて憂慮の念に堪えないものである。国土交通大臣においては、今回の沖縄防衛局による執行停止の申立てをただちに却下するとともに、審査請求も却下することを求める。
呼びかけ人(50音順)

 岡田正則(早稲田大学教授) 紙野健二(名古屋大学教授)
 木佐茂男(九州大学教授) 白藤博行(専修大学教授)
 本多滝夫(龍谷大学教授)  山下竜一(北海道大学教授)
 亘理格(中央大学教授)




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